最近のギター、特にカッタウェイが施されたギターのほとんどがピックアップを内蔵しています。たいていはアンダーサドルを中心にプリアンプで音を補正して出すシステムで、各メーカーが「即戦力」や「簡単なレコーディング」を売りにしています。
最近こうしたエレアコの改造依頼が増えてきました。その背景には「更なる良い音の追及」があると思います。
確かにエレアコは大きな音を出すことはできますが、アコースティックギターの「音質」という点では妥協したのが多いのも事実です。アコギの良さはまずはトップ、ボディーの鳴り、それをオーディエンスに忠実に伝える音です。そこで登場するのがエレアコやエレガットに、高性能の貼り付けピエゾである「TSピックアップシステム」を加える方法です。
ダブルピエゾをそれぞれのギターに合った位置に貼り、メーカー製のプリアンプの入力部分のインピーダンスや、レベルを調整して改造すれば「素晴らしいアコースティックサウンド」を得ることができます。また、入力部分に信号を入れるので、もともとついているプリアンプのトーンコントロールやチューナーやミュート機能をそまま使うことが可能です。
では、最近改造したエレアコ、エレガットのいくつかを紹介しましょう。
Aria A58CWE/N
アンダーサドルにコンデンサーマイクの音をミックスできるタイプのエレガットです。ナット幅が45mm程度で、アコギやエレキからの持ち替えも無理がありません。
まずは音をいろいろ出してみて分かったのは・・・。
- コンデンサーマイク:ハウリング対策と思われるがほとんど低音を拾わず、高音寄りでエア感も限界がある感じ。
- アンダーサドル:ほとんどのエレアコ、エレガットのメインとなっているピックアップだが、アタックが強く弦からの音を直接拾いすぎる。
そこで登場するのが、アコギのトップの振動を拾う「コンタクトピエゾ」の追加です。 TSピックアップシステムのコンタクトピエゾを加えることで、自然なアコースティックの音を狙います。
まずはshadowのプリアンプを分解してみます。
コンデンサーマイクがダイレクトに刺してあります。入力部分はコンデンサーマイクをどちらにさしても音が出ましたし、ナノマグも入力できるようです。TIPが5V程度加圧されており、入力前にカップリングコンデンサーが必要になります。
3つの基板からできていました。またカバーに取り付けたときに共振によるビビりを防ぐために2つのバネの支えがついています。
コンタクトピエゾをミックスするために、アンダーサドルの入力部分を乗っ取って、ボリュームで調整しながら実験的にコンタクトピエゾをつないでみました。そこそこの音が出ましたが、アンダーサドルに比べて幾分ゲインが低いので、このままでは使えない感じでした。 そこでいつものようにオペアンプでゲインを稼ぐために電源を乗っ取ることにしました。
ボタン電池二つで稼働するので6Vですが、テスターで図ると5V程度しか出ていませんでした。比較的低電圧で動くオペアンプで幾つか回路を試みました。 ちなみに電源はダイオードを通したのちに10μF程度のコンデンサーで安定化させて供給されているようでしたので、今回はコンデンサーの部分から電源をいただきました。
後付けしたボリューム付プリアンプで、アンダーサドルとTSピックアップのバランスをとることができます。
完成です。コンタクトピエゾ60%、アンダーサドル40%で良い感じです。
今回はコンデンサーマイクの音は入れないでサンプルをとってみました。
アンダーサドル
TSピックアップの貼り付けピエゾ
ミックスした音
いかがでしょうか。アンダーサドルは弦からの振動、貼り付けピエゾはトップの振動。ミックスすると良い感じになりました。
Martin DCPA1
Fishman F1 Aura内蔵のエレアコです。アンダーサドルからの音をマイクシミュレータ一でアコギっぽい音を作り出すことができます。所有者様が改造に踏み切った理由は「ボディヒットをまったく拾わない」からだそうです。
それではFishmanのプリアンプを分解して分析してみましょう。
アンダーサドルの配線を見極めTSピエゾをパラで二つつなぎました。TSピックアップからの音だけで、アンダーサドルからの音がほとんど出ません。いくらか直列に抵抗をつないだ結果、どちらもバランスよく出すには入力抵抗を510kΩにすると良いようです。今回はボリュームやプリアンプを付けなくても良い感じになりました。
ボディヒットもがんがん拾いますよ!いい感じです。
ライブ会場で受け渡し、ご本人様に弾いてもらい一発録りでサンプルを取らせていただきました。
TSピックアップシステムをブランドしたサンプル音
Cort Acoustic Guitar CEC5 Natural
安価なエレアコ。ですがTSピックアップ搭載の改造を施せば音は高級なエレガットに勝る音になります!
TSピックアップシステムに全て変更するのもよし、今回のように既存のプリアンプを改造するのも良いかもしれません。
Fishmanのプリアンプは比較的TSピエゾと相性が良いようです。今回も抵抗を直列につなぐだけで良い感じのバランスになりました。
アンプから出る音はビックリすると思います!アンダーサドルだけの音とは全く違います。
エレアコ、エレガットの改造に興味のある方はご連絡ください。