酒井 誠・ギタリスト Makoto Sakai

ギタリスト・酒井 誠ーMakoto Sakai。ZZLの主催者。  初心者歓迎:TSギター教室。

アコギ用ピックアップ

14.【番外編】ラインアレイ・スピーカーの製作1(なぜラインアレイを選んだか)

2019/07/18

TSピックアップシステムも、ほぼ満足の行くレベルになってきました。これで音の入り口の問題はほぼ解決したと言えるでしょう。 それで、次に、追求すべきは音の出口であるスピーカーでしょう。アコギ用アンプは数々ありますが、楽器店で試した限り、アコギの音を十分に引き出すと同時に さらにその上を行くサウンドを求めるには市販されているものは難しいかもしれません。満足の行くレベルのスピーカーシステムだと高価なものになってしまいます。それで自分の好みも含めて、スピーカーシステムの追求も行ってゆかなければならないと感じました。

アコギ用のスピーカーシステムで理想的なものは?

ライブ時に、PAに直接繋いでも良いのですが、リハーサルに時間がかかったり、ハウリングの問題があったり、会場の広さや集まる人数、エフェクトの問題もあって、なかなか演奏者の好みどおりの音を出すのは難しいです。
最近、石井完治さんのライブの使用機材で大変良いものを発見しました。それはBOSEのスピーカーシステムです。恐らく「L1 modelI system(エルワン モデルワン システム)」です。2mのキャビネットに24個のラインアレイスピーカーを内蔵ししています。調べたところによると「ハウリングにも強く、水平160°の非常に広いカバーエリアを確保し、1セットで400人~500人クラスの会場まで対応可能」とのことです。演奏者一人に対して一つのスピーカーシステムを自分の斜め後方に配置すれば、モニターにもなり、観客からは自然に演奏者の方向からから聞こえてくる音を実現できるそうです。
このシステムなら、アコギの音を広がりのある音場で忠実に再現してくれると思いました。しかしネックになるのが価格です、サブウーハーも含めると、40万円以上かかるらしいです。そこで、このスピーカーを模範にし、自分のアイディアを盛り込みながら「ラインアレイ・スピーカー」自作することにしました。
ラインアレイスピーカーの仕組みについては、他サイトに譲ることにして、その特徴はについてまとめておきたいと思います。
【ラインアレイ・スピーカーの特徴】

  1. 音の減衰が少ない
    点音源の通常スピカーは距離の2乗に比例して音が減衰してゆきます。スピーカーから1mの音の大きさと2mの音の大きさでは1/4の大きさになってしまいます。
    ところが、ラインアレイスピーカーでは、スピーカー同士の音の干渉によって線音源の音になり、スピーカーからの距離に対して減衰が極めて少なくてすみます。言い換えれば、前座席と後方座席で比較的同じ音が聞こえてきます。前がうるさくて、後ろが明瞭ではないというような事態を避けることができます。
  2. ハウリングに強い
    通常、ハウリングは会場の反響によって引き起こされる場合がほとんどです。この残響がハウリングに直結します。ライン・アレイスピーカーは、音が直線的なので、複雑な反響音を避けることができ、ハウリングにきわめて強いです。スピーカーの前で演奏しても、ハウリングは起きませんでした。
  3. 音が明瞭
    会場の反響の影響をあまり受けないということは、音が鮮明に聴衆に伝わるということです。自宅やスタジオで音を一生懸命つくり、曲ごとにエフェクトを決めておいたとしても、会場によってその音が全く出ないという経験は誰もがあると思います。しかしラインアレイならば、練習で出した音をそのまま本番でも生かせる音を作ることができます。
  4. 設置面積が少ない。
    ラインアレイ効果を得るためには、同特性のスピカーを直線に配置するだけですから、比較的容易に設計することが可能です。縦方向には高さが必要になりますが、設置面積は少なく、途中で連結するように設計すれば、持ち運びにも有利です。
  5. 演奏者から音が聞こえる
    ステージの両サイドにスピーカーを配置して従来のシステムだと、音が自分よりのスピーカーから出ている感じになり、不自然な音でした。ラインアレイを演奏者一人一人に使えば、自然な演奏者から出てくるかのようなより自然な音が得られます。

ラインアレイ・スピーカーの製作このように、アコギの音を出すには理想的なスピーカーシステムだと感じました。唯一の欠点はスピーカーを数多く使うのと、見た目に説得力がない(笑)くらいでしょうか。
自作の場合、まず直線的にスピーカーを配置するのが難しいと思っていたのですが、ネット上を調べてみると、塩ビを使った「塩ビ管スピーカー」なるものが、比較的安価で、小さなスピーカーでも迫力ある低音が出せることを知り、早速前段階として写真にあるような塩ビ管スピーカーを作ってみました。ホームセンターで売っている塩ビ管にフルレンジ・10cmのスピーカーをはめ込んだだけですが、これがなかなか10cmとは思えない迫力ある低音と、疲れさせないマイルドな音がでます。下側に少し隙間を設けて、バスレフにしています。現在はこれを2つ作り、液晶テレビの左右に配置しています。スピーカーのキャビネットとして良いのではないでしょうか。長く聴いていても疲れない、それでいて、迫力あるサウンドが再生されています。そして、この直線的な塩ビ管はラインアレイにもってこいだと思いました。見た目は置いておいて、これなら使えると思い、とりあえず、スピーカーを直線配置してみました。
約1mの塩ビ管に10cmのスピーカー8個です。音を出してみたところ、これがなかなか良いのです。音を言葉で表現するのは難しいですが、「疲れない音」「自然」「マイルド」です。部屋全体に音が広がる感じです。一つのスピーカーの定格出力が小さくても数でカバーできるので、大丈夫です。スピーカーから離れて聴いても明瞭度は抜群です。
しかしこれでも、十分のラインアレイ効果を得るためには長さが足りません。ポータブルも考慮するなら、1mのものを二つ作り、上下に連結できるようにするのが良いかもしれません。それで実際に連結方式で作ってみるとこんなに高くなりました。もう少しで部屋の天井に付きそうです。

ラインアレイ・スピーカーの製作ラインアレイ・スピーカーの製作

ラインアレイ・スピーカーの製作ラインアレイ・スピーカーの製作

まだ、下部にはスピーカーを入れていませんが、全体像が見えてきました。キャビネットの容量や共振周波数を計算していませんが、長ければ長いほど良いという印象をもちました。あとは、吸音材を適当に音を聞きながら詰めればよさそうです。塩ビ管にスピーカを並べるだけの超お手軽スピーカーシステムです。次はスピーカーをさらに8個追加し、計16連にします。また将来的にはパワーアンプも含めて作る予定ですので、気長にお付き合いください。

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