酒井 誠・ギタリスト Makoto Sakai

ギタリスト・酒井 誠ーMakoto Sakai。ZZLの主催者。  初心者歓迎:TSギター教室。

アコギ用ピックアップ

12.Morris S-101のピックアップを乗っ取ってみる

2020/05/29

最近モーリスのSシリーズを2台購入しました。最初に購入したのはS-92で、シダーTOP、マホガニーSIDE・BACKです。ピックアップなしモデルでしたので、TSピックアップシステム3を取り付けました。 次に購入したのが、S-101でスプルースTOP、ローズウッドSIDE・BACKです。B-BANDのアンダーサドル方のピエゾと、プリアンプが内蔵されているモデルです。最近のアンダーサドルのピエゾは良くできているとは言え、 生音とはかなり違いますし、何よりもアコギ全体の個性がほとんど出ません。ピックアップを取り外して、TSシステムにしようかと思いましたが、今回はS-101についているB-BANDのA1というエンドピンジャック一体型の プリアンプを乗っ取り、TSピックアップとの融合を試みました。
B-BAND UST-29とTSピックアップシステムの音の比較

S-101とS-92の写真です。サイズはほぼ同一、材質の違いがはっきりと音に出ます。

Morris S-101のピックアップ

まずは、S-101に内蔵されているB-BAND UST-29というアンダーサドル型のピックアップの音です。 S-101からミキサーでダイレクトに取り、音の加工はしていません。
B-BAND UST-29の音


かなりいい線行っていますが、よく聞くとやはりピエゾです。プリアンプで幾分補正されますが、ピエゾ独特の音は払拭できません。 ボディヒットはほとんど拾いませんし、エア感もほとんどありません。
次に、TSピックアップシステム3の音です。使用ギターはS-92で、マグネットはNEO-Dのハムバッキングです。
S-92からミキサーでダイレクトに取り、音の加工はしていません。

TSピックアップシステム3の音

幾分マグネットの音が強すぎましたが、ギターの持っている本来の音が出ていますし、ボディヒットも確実に拾い、エア感は抜群です。 ですから、S-101にもシステム3をつければすべて解決なのですが、今回はB-BAND UST-29の音をマグネットの代わりにして、システム3の音を構築することにしました。 B-BANDはアンダーサドルとは言え、低音から高音まで十分出ていますし、足りないのはエア感とボディの箱鳴りです。ですから、これを補うためにTSピックアップの コンデンサ・マイク部分をプリアンプに取り付け、ミックスされたものをモノラルとして取り出すことにしました。

B-BANDのプリアンプを解析する

B-BANDのプリアンプは、A1というエンドピンジャック一体型ですが、分解して解析したところ、回路はそれほど複雑ではなく、プリアンプの出力部分にコンデンサ・マイクの出力を ミックスすれば何とかなりそうです。いつものようにブレッドボードで、簡単なチェック回路を作り、実験してみます。 B-BANDのプリアンプを分解したところです。

Morris S-101のピックアップMorris S-101のピックアップ

すべてチップ抵抗、チップコンデンサで小型化され、専用のオペアンプが一つ内蔵されていました。外側の筒状のケース部分を外すと相当ノイズを拾うようになりますが、不思議なことにケースに入れたとたんノイズは皆無なります。周囲をGNDに落とすことは本当に重要なことですね。
ブレッドボードを使って、乗っ取れる場所を見極め、コンデンサーマイクの音を入れてみます。

Morris S-101のピックアップMorris S-101のピックアップ

大体回路が決まったので、いつもの自作CNCフライス盤で基板を切削し、グリーンレジストを施しました。

Morris S-101のピックアップMorris S-101のピックアップ

出来上がった回路です。B-BANDのプリアンプにミックスして入力します。

Morris S-101のピックアップMorris S-101のピックアップ

この段階で音を出してみましたが、どうも納得した音が出ません。プリアンプの前段階に入力すると、コンデンサからの音が大きすぎて、コンデンサからのゲインを下げる回路にすると、ノイズが載りやすくなってしまいます。プリアンプの後段階に入力すると、今度はコンデンサの出力が足りません。うーん、ちょっと失敗!ということで、気を取り直して、TSピックアップシステムのプリアンプも内蔵することにしました。ダブルプリアンプシステムにしてミックスすることにしました。

TSピックアップシステムとの融合

再び、回路を設計し直し、コンデンサマイクのゲインを10倍ほどにし、B-BANDのピエゾのゲインと合わせるようにします。インピーダンスマッチングのために抵抗を介してダブルプリアンプシステムでミックスし、ライン出力します。 左が今回設計したプリアンプ回路です。この基板上にいつものように、コンデンサ・マイクとシールド配線でB-BANDと繋ぎます。電源もB-BANDの電池から拝借し、エンドピンジャックにプラグを差し込むと同時に電源が入るようにしました。

Morris S-101のピックアップMorris S-101のピックアップ

出来上がった、B-BAND乗っ取り型のTSピックアップシステムです。S-101に内蔵します。

Morris S-101のピックアップMorris S-101のピックアップ

完成!

やっと完成しました。前と同じ条件で即興演奏を録音してみます。ピックアップシステムからダイレクトに録り、音の加工はしていません。

B-BANDを乗っ取ったTSピックアップシステムの音

いつもライン直接の音ばかりなので、今回は少しリバーブをかけてみました。

B-BANDを乗っ取ったTSピックアップシステムの音(リバーブ)

ピエゾのプリプリした音が自然な音に変わります。ギターを叩く音もしっかり拾いますし、高音部の切れが一味違います。TSピックアップシステム3と同程度の音になりましたので、曲や好みによって使い分けることができると思います。システム3はマグネットを付けるために手間が必要ですが、これなら、コンデンサ・マイクと内蔵ピエゾですから、マグネットを付ける手間がいりませんし、トップの音を損なうことはありません。マグネットとは一味違う、レスポンスの良い音です。
今回作った回路は、ほとんどのプリアンプを内蔵しているアンダーサドル型のピックアップに対応できると思います。エレアコを改造したい方にも有効な方法かもしれません。

追記:
すでにアンダーサドル型のピックアップを使っている方は多いと思います。ギターの持ち込みになると思いますが、メールにて問い合わせていただければ個別に、コンデンサーマイクとプリアンプ回路を取り付けたいと思いますので、ぜひご利用ください。

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