3.アコースティックギターの弦の張り替え方
2020/05/06
アコギの弦の交換の仕方について説明したいと思います。今回はナイロン弦ではなく鉄弦の張替え方です。これまでペグへどのように弦を巻きつけるかに関して、様々な方法が考案されていますが、これから示す方法は、緩む等のトラブルが少なく、かつ比較的分かりやすい方法を採用しました。
1.弦を緩める
まず、すべての弦を緩めます。全く張りがなくなるまで緩めます。通称ダルダル状態ですね。ネックやボディへの影響を考えて、一本ずつ緩めて張り替えるのが良いと言う意見もありますが、それほど頻繁に張り替えるわけではないので影響は考えなくても良いでしょう。張り替えるときはスッキリと一度に外すほうが気持ちも良いです。
すべての弦を緩めます。
こんな感じでダルダルです。
2.ブリッジピンを引き抜きます。
手で引っ張って抜ける場合はそうします。手で抜けない場合は、専用の工具でテコの原理で抜く方法と、サウンドホールから手を入れて、ピンの下を内側から指で押すことによって抜く方法があります。どうしても抜けない場合は、ペンチでピンを傷つけないように布で挟んで引き抜きましょう。ピンを抜いたら、弦もブリッジから抜きます。
手で抜く方法
専用の工具を使う方法
サウンドホールから手を入れてピンを押す方法
弦を引き抜きます。
すべての弦を抜き終わりました。
3.ペグから弦を外す
ケガをしないように注意してください。弦の先は針のように鋭いです。巻いてある部分を徐々に解いてゆき、最後にペグの穴から弦を抜きますが、その時に反動でケガをしないように慎重に引き抜いてください。あて布をしたり、抜けたときの弦の端が爪に当たるようにしてケガを未然に防ぐようにしてください。決して力任せに引き抜かないようにしましょう。
最初はこんな感じで解きます
最後はケガをしないように親指の爪が弦の端にあたるように抜きます 4.掃除をする 弦が張ってあって、手が届かなかったところも良く磨くことができるので、指板やブリッジ周りをよく拭いておきましょう。ヘッドにもほこりがついていると思いますので、綺麗にしてあげましょう。
5.ナットの溝にに鉛筆の芯の粉を擦り付ける
専用のグリスを使う方法もあります。見た目は良くありませんが、鉛筆の芯は摩擦を少なくし音にも影響が少ないです。こうしておけば、チューニング時に「カチッ」といって突然音程が変わる、心臓に悪い現象を防ぐことができます。さらにナットの消耗も少なくてすみます。
6.弦をブリッジに通す
下記のようにボールエンドの部分を少し弦を曲げてから通すと良いと思います。まっすぐのまま挿すと、ブリッジピンの先にボールエンドが引っかかり、ピンが弦の張力で思わぬ時に抜けてきて危険です。 曲げる方向ですが、ボールエンドの弦の巻いてある縁がピンに当たるようにした方が音が良くなります。なぜこの角度が良いかについては次の7で説明します。
このように曲げておきます。
ブリッジの穴にこの角度で入れます。 図で表すと次のようになります。
良い例
悪い例
7.ブリッジピンを差し込む
ピンに溝がある場合は、溝に弦が入るようにして根元まで入れます。入れた後弦を手で引っ張り、ボールエンドの部分がしっかり止まるようにします。
弦を支えておきます
ピンを差し込みます
ピンをしっかり押し込み、、弦を引っ張ります 図で表すと次のようになります。
弦の曲げ方が良ければこのように止まります。
悪い例
ここで、なぜボールエンドを縦方向で止めると音が良いのか考察してみましょう。
接触面がそれぞれピン側とトップ側に曲面となり、接触面積が圧力により均等に得られる場合が多い。
ボールエンドのコーナーが接触するために点接触となり、弦の張力が加わるとトップの木の側に不均等にめり込む。 必ずしも、横方向が悪いというのではありません。木をいためますし、めり込み具合で音が変わってしまいます。良い方向に変わることもあれば、悪いときもあります。ですから、均等なクオリティを維持でき、各弦のバランスを考慮に入れるなら、たて向きにするのが正解だと思われます。 8.弦をペグの穴に通す ペグの穴がナットのほうに向くように回しておき、弦が途中で曲がらないようにまっすぐ挿入します。一旦弦をある程度引っ張られるまでペグの反対側から引っ張り真っ直ぐにします。
穴の向きがナット側
まっすぐに弦が入ります。
9.弦を戻す
一旦、真っ直ぐになった弦を、ナットの付け根辺りから弦をつまみ、1フレットまで戻します(6弦の場合)。その位置から、ペグを回巻き取りはじめます。ちなみに戻す目安は下記のとおりです。
- 6弦 1フレット分程度
- 5弦 1フレットと4分の1程度
- 4弦 1フレットと半分程度
- 3弦 2フレット分程度
- 2弦 2フレットと4分の1程度
- 1弦 2フレットと半分程度
戻す量は弦の太さや、ベグの巻き取り部分の径等で変わりますので、一概に何ミリと言えるものではありません。ただチューニングした状態でペグの穴に差し掛かったままですと、そこから弦が切れやすくなります。音質的には巻き数が少ないほうが良いようですが、それほど変化はありませんから、弦が切れないように、ペグの穴の下に来るぐらいまで巻くようにしています。
ナットの部分で弦を持ちます
6弦の場合1フレット分戻します 一旦巻き始めたら、弦を引っ張り続けてください。そうしないと、ペグから弦が外れて、巻き乱れが起こります。
10.弦を一回りだけ上側に巻きます。
ペグを巻いてゆくと、弦の端が巻いている部分と接触しますから、最初だけ上側をとおるようにします。後は下側に巻いて行きます。このようにすると、弦の端が巻いてある部分と挟み込むようになり、不用意に弦が抜けてしまうのを防ぐことができます。特に1,2弦のプレーン弦は抜けやすいので、この方法は効果的です。チューニングも安定します。
しっかり弦を引っ張りながら巻いて行きます
最初の弦の端が近づいてきます
巻いてゆく弦を一度だけ上に通します
次からは下を通してゆきます
最後まで下に巻き取ってゆきます ストリングスワインダーを使うと巻取りがすばやく簡単になります。
11.余った部分を切る。
ある程度弦が張られたら、余った部分をニッパなどで切り取ります。切れ端がとこかに飛ばないようにきちんと弦の端を持って切りましょう。決して本線を切らないように注意してください。
ニッパで根元から切ります
切った後です。弦の端が動かないように挟まれていることが分かります 6弦が終わりましたら、5~1弦も同様に6番目から繰り返します。
12.チューニングします。
新品の弦は良く伸びるので、「弦を強めに弾いてチューニングする」を安定するまで繰り返してください。チューニングの方法はココを参照してください。 以上が弦の張り替え方です。細かく書くと長い工程ですが、慣れれば簡単です。最初はビビッて経験者に弦の張り替えを頼んでしまいがちですが、ぜひ、自分で挑戦してみてください。何度か張り替えるうちに、コツを掴んで、張り替え自体が楽しくなるようなら、立派なギターフリークです。
参考までに各弦の周波数は下記のようになっています。
1弦開放(E):330Hz
2弦開放(B):247Hz
3弦開放(G):196Hz
4弦開放(D):147Hz
5弦開放(A):110Hz
6弦開放(E):82Hz